【にゃんこらむ】 琉球にゃんこの歴史(2) 上里隆史(琉球歴史家)

 

 かつての琉球人はネコ好きだった様子が古い史料から見えてきましたが、
近世(江戸時代)の琉球にも、ネコに関する記録がチラホラ出てきます。

 

琉球国王を承認するため、1800年に中国から派遣された使者(冊封使)の李鼎元は、
琉球のネコについて、こう述べています。
「琉球の地は、ネズミとスズメがもっとも多い。そして、ネズミの被害が大きい。猫がいるのだが、ネズミを捕えることを知らないのに、この国の人はペットにしている」(李鼎元〔原田禹雄訳注〕『使琉球記』)

 

これはおもしろい証言です。中国の使者は「ネコはネズミを捕まえるために飼う動物」と考えているのに対して、琉球の人は「かわいがるため(つまりモフモフするため)に飼う動物」と考えていたことがわかるのです。

 

 

 

琉球でネコをかわいがっていたのは地元の人たちだけではありませんでした。
1800
年代に入ると、ヨーロッパやアメリカから東アジアに艦隊がやってきて、琉球にも訪れています。
なかにはしばらく滞在する人たちもいるのですが、1853年に来航したアメリカのペリー艦隊の一行が、
燃料の薪(まき)や弁当とともにネコ2匹を要望しています(『琉球王国評定所文書』)。

 

また1885年、天久の聖現寺に滞在したフランス人神父一行は琉球の王府に対して、
卵や魚、塩といった物資のほかに、メスのネコ1匹をもらいたいとお願いしています。
通訳として同行した中国人も、ネコを1匹飼いたいと願い出ていて、その際は銭20貫文で購入しています。
故郷を遠く離れ、癒しを求めるためにネコを欲しがったのでしょうね。

 

このようにネコは沖縄の歴史のなかで人々とともに暮らしてきたことがわかりますが、
最後に大正時代の新聞『琉球新報』の投書欄に書かれた100年前のネコについて紹介しましょう。

 

「暖かい小春日和となった。日が縁側に一ぱい射して猫が日向ぼっこをしている。

今朝水をかけてやったカンナから時々、ポテリポテリと雫が落ちる。(1915〔大正4〕年46日:星玉の投書)」

 

 

 

 

 

 

 

【執筆者プロフィール】

 

 

上里隆史(うえざと たかし)
琉球歴史家。法政大学沖縄研究所国内研究員。専門は琉球の歴史。著書に『目からウロコの琉球・沖縄史』、『海の王国・琉球』、『尚氏と首里城』、『新聞投稿に見る百年前の沖縄』ほか多数。NHKドラマ「テンペスト」時代考証もつとめる。